精神科病院の医療従事者による入院患者への暴力行為に関する声明

 

 精神障害がある方々の社会的復権と福祉に寄与し、人権を守る職能団体として活動する静岡県精神保健福祉士協会は、静岡県沼津市のふれあい沼津ホスピタルで発生した暴力行為に対し、声明を発表します。

 ふれあい沼津ホスピタルの男性看護師2名による入院患者への暴力行為が、令和4年12月20日に衝撃的な映像とともに報じられました。

 本件は、静岡県が実施する精神保健福祉法に基づく実地指導により判明したものではなく、内部告発と思われる匿名の通報を受けた沼津市から静岡県への情報提供とメディアの取材から明らかになったという特異性があります。

 事件の詳細は警察による今後の捜査を待つことになりますが、病院職員などの集団の前や保護室で繰り返された虐待の凶暴性や残忍さに対し、本協会ではこの事態を重く受け止めるとともに大変残念な思いと強い憤りを禁じ得ません。

 今回、令和4年9月8日に1名、その後9月15日と28日に別の入院患者1名に対する暴力行為が発生しています。発生から暴力行為を行った当該職員に対する病院での処分までの間、気持ちや声を出せない環境に置かれた状況で実際に暴力を受けた方やそのご家族の精神科医療への強い怒りや失望は計り知れないものと推察します。また、同時期に入院されていた方々も、同様の暴力行為の被害者となりうるのではないかと不安を抱いておられたのではないかと思われます。

 病院の組織体制についても、9月末時点で事実を把握していたにもかかわらず、当分の間、事実確認がなされず、確認後も職員個人が行ったこととして、当該職員個人の責任を問うことで事件の終結を図ろうとしたこと、精神保健福祉法の届出義務がないことを根拠に、静岡県に報告しなかった、さらに、被害届が出されないことを理由に警察に報告をしなかったことは、医療機関として患者の権利擁護、権利保障の仕組みが機能していなかったと言わざると得ません。

 本件について、ふれあい沼津ホスピタルの特異な体質に起因するものとして終わらせることなく、また今後同様の事件が繰り返されることのないよう、監督権限を有する静岡県及び政令指定都市である静岡市、浜松市とともに、実効性のある権利擁護システムの構築に向けた体制整備、強化に取り組む必要性を再認識したところです。

 ふれあい沼津ホスピタルと静岡県は第三者委員会等を設置し、患者に対する虐待等に関する事実経過の精査、入院患者や職員への聞取りをはじめとした実態調査を通した原因究明、情報の公開及び再発防止への取組が望ましいと考えております。本協会も当該取組に対する協力を惜しみません。

 本協会は、今回の事件を一医療機関の問題として看過することなく、県民の誰もが安心して精神医療を受けることができるよう、改めて精神障害者の権利擁護について、全力で取り組むことをここに表明いたします。

2022年12月27日

一般社団法人静岡県精神保健福祉士協会

会長  菅 原 小 夜 子